かんなの観劇記録

ミュージカル・コンサートなどの鑑賞記録

舞台「呪術廻戦」《配信・大千穐楽》

公演記録

舞台「呪術廻戦」
2022年7月15日(金)〜31日(日) @天王洲 銀河劇場
2022年8月4日(木)〜14日(日) @メルパルクホール大阪

佐藤流司
泰江和明 豊原江理佳
高月彩良 定本楓馬 寺山武志
和田雅成 田中穂先 石井美絵子
太田基裕 福澤希空(WATWING)
藤田玲 山岸門人 南誉士広
五十嵐拓人
三浦涼介

河野凌太 小泉凱 遠井公輝 長嶋拓也 望月凜

原作:「呪術廻戦」芥見下々(集英社週刊少年ジャンプ」連載)
脚本:喜安浩平
演出:小林顕作
主催:舞台「呪術廻戦」製作委員会

感想

舞台「呪術廻戦」・大千穐楽公演をアーカイブ配信で視聴しました📺
上演当時に色々と耳にしていましたが、原作ファンということもあり怖いもの見たさで一度見ておきたいな〜と思って手を出したものです。覚悟していたので思ったよりは……ですが、まあまあモヤモヤしました🤔
必要以上に愚痴っぽくなってもアレなので、自分なりに整理したうえで感想を書きました。ネタバレは多々ありますので、未見の方はご注意ください⏬

観劇オタクとして、ここは合わないと思ったところ

観客の想像力に委ねすぎ

今どういう状況なのか・何が起こっているのかを観客に想像させるシーンが多すぎると感じました。そういう、ある種の余白を楽しむのも観劇の醍醐味の一つだとは思うものの、あまりにもその比率が高すぎるなと。

たとえば戦闘シーン。七海vs真人のラストで出る大技「瓦落瓦落」は技が照明と真人の口頭説明で表現されるのみでしたが、折角プロジェクションマッピングがあるのだから使えば迫力あるシーンになっただろうになぁと思ったり。真人vs虎杖で順平が姿を変えられる場面、前後を見れば状況は理解できるけれど、咄嗟には何が起こったか分からないだろうなぁと感じたり。

一番顕著だったのは虎杖が生き返るシーン。「解剖台に横たわった虎杖の遺体を取り囲み、今まさに解剖を始めようとした瞬間に虎杖が息を吹き返す」という流れですが、原作未見だったら理解が追いつかないんじゃないでしょうか🤔序盤でせめて白い布をかけられた解剖台なんかが出ていればまだしも、客席の方に向かって何も無い場所を見つめて会話するのみ、という演出ですべて理解するのは無理があるように感じます。目覚めるシーンは様々な事情(たぶん着替えが間に合わないから)があって顔はめパネルを使ったのでしょうけど、だったら最初から目を閉じたパネルを置いておいた方がよかったんじゃないですかね……。

これは版権元との兼ね合いなのかもしれませんが、「原作通り」の流れに固執した結果、話や視点があちこち飛びすぎてどこに意識を向けたらいいのかが分かりづらくなっていたように感じます。勿論照明の当て方などは工夫されていますが、終始忙しないなぁと思った約3時間でした。配信という、視界が限られた環境で視聴していてそう感じたので、現地にいたら尚更その思いは強かったのだろうと思います。

曲の統一感がない

いろいろな歌が出てきて、どれかにすごく否があるというわけではないのですが、全体的にまとまりが無かったなと思います。そして歌の大半が台詞調で歌詞が曲に収まりきっていない or フレーズの切れ目が不自然なので、尚更違和感がありました。

場面転換っぽく使われていた冒頭の虎杖ソロ、野薔薇ソロ、順平ソロあたりは(歌詞の無理矢理感を除けば)さほど違和感なく聴けましたが、序盤の五条のラップぽい曲、七海の懐メロぽいソロに関しては特に唐突感が拭えなかったです。

出てくる曲がどれも主役で、引きの印象を与えるメロディーラインがあまり無かったからでしょうか。一つの舞台で様々なジャンルの曲が流れる場合、統一感を出すのがとても大変なんだろうと思います。他作品でいうと「RENT」はあらゆるスタイルを取り入れていても全体はとても上手くまとまっていますが、あれは相当稀有な成功例かと。

観劇オタクとして、ここは良くないと思ったところ

キャストのポテンシャル(体力面)に頼りすぎ

戦闘シーン全般ですが、見ていて危ないなとヒヤヒヤする場面が多かったです。そもそも二段組のセットが結構ガタガタ揺れていますし、その上のゲートっぽい部分も敢えて低めに作られていたのか、みなさん毎回屈みながら通り抜けてましたよね。あれ、ちょっと気を抜いたらすぐに頭をぶつけそうだなと。

あとは飛び降り系。階段を駆け上がっては飛び降り、を繰り返す学長曲、歌いながらはしごを登って飛び降りる五条ソロなど。セットもあまり頑丈でなさそうな中で、そこまでさせる必要あるのかな? と思う演出がちらほら。

虎杖役・佐藤さんが稽古中に怪我をされていましたが、無理もないなというのが観劇しての正直な感想です。最低限の安全が確保されていると安心できるからこそ、アクションシーンに「凄いなぁ」と素直に感嘆できるわけで。その安心感が得られなかったら、ただただ心配になってしまうんですよね😔

衣装が安っぽい

恐らく既製品ではないと思われる衣装が全体的に安っぽいな、と。虎杖や伏黒の制服、五条の仕事着あたりの布が硬そうで、身体の動きに追いついていないように見えました。あとすごく通気性が悪そう。アクション多いと物凄く暑くなりそうですね🥵

アンサンブルの方々が呪霊を演じる時に着られている全身タイツとか、宿儺の入れ墨用の衣装とかは色々なところに皺が寄ってしまっていて、遠目でも違和感がありました。ウィッグも、ちょくちょく静電気で変な動きになってましたね🤔

何よりも衝撃だったのは真人の上着。ビニールか何かを切り貼りして作ったような薄さ。これに関しては今回だけでなく、上演当時にゲネプロ映像を見た時からインパクトが絶大でした。夏油の五条袈裟もなかなかのチープさでしたが、真人の衣装が衝撃すぎて。もしかしたら現地で見ていれば印象が違ったのかもしれませんが。。。

そして絶対ダメだと思ったのは、野薔薇と真希の制服のスカート。ペナペナでしょっちゅう捲れそうになってて。特に野薔薇はアクションもあるうえ、配信では下からのアングルも多かったのでハラハラしました。あれは本当に良くない。

呪術廻戦オタクとして、ここは合わないと思ったところ

中途半端にエピソードを盛り込みすぎ

これも版権元との兼ね合いかもしれませんが、約3時間の舞台にしては情報を盛り込みすぎていたように感じます。「津美紀」も「沙織ちゃん」も伏黒と野薔薇というキャラクター上は非常に重要な意味を持っていますけど、ワードを出すだけ出して終わってしまった印象で、勿体ないなと。2年生達も同じで、伏黒と野薔薇の出番を増やすために入れただけでは? と邪推してしまうような扱い。或いは続編ありき。

トータルを振り返った時に、もうちょっと思い切りよく削ぎ落としてよかったんじゃないかなと感じる場面が多々ありました。観客=原作ファン(原作を読んでいない人は観に来ない)というのが大前提だったんですかね。

コメディとシリアスのバランスが不自然

これは好みの問題だと思うんですが、原作にないお笑い的なシーン(一部は日替わり要素?)が多くて観ていてダレました。

たとえば特級呪霊の領域に巻き込まれた虎杖・野薔薇が「どうしよ〜!」と慌てて踊るシーンとかは、シリアスな流れの中でコマの隅っこに描かれるからクスッと笑えるものであって、敢えて前面に出されると白けてしまう。野薔薇ソロの中の「ハナクソ食ってた〜」とか「カモメに火を〜」とかのパネルみたいに、表現の補足になる誇張だったらそう不自然さは感じないんですけどね。

映画のくだりとかも、ここにこんなに時間を割くならそれこそ「津美紀」や「沙織ちゃん」の回収をしたほうが余程有意義だったんじゃ?と。繰り返しですがこれは本当に好みだと思います。私には合わなかったです。

呪術廻戦オタクとして、良いと思ったところ

テーマがわかりやすい

限られた上演時間で31話までのストーリーをさらっていましたが、情報量のわりには話の軸がぶれずにしっかりラストへ向けて着地していたと思います。原作自体に余談的なエピソードがさほど多くないので、落とせる部分はあまり無かったんじゃないかな🤔様々なシーンがありますが、あくまでも「虎杖悠仁」の物語というスタンスが貫かれていたところは上手くまとまっているなぁと感じました。

観劇オタクとして、良いと思ったところ

曲がキャッチー

合わないと思ったところで書いた通り、主役っぽい曲が多い影響か、耳に残る曲が多いように感じました。ヒーローっぽい導入の虎杖ソロ、南国風味の漂う野薔薇ソロ、謎の中毒性がある2年生曲(前半の方)。好き嫌いは別として、観劇後も繰り返し思い出す曲があるというのはいいことだと思います。

個人的には順平ソロの曲調が、彼の純粋さと危うさとを綯い交ぜにしたような雰囲気が出ていて好きです。

キャストが凄い

2.5次元作品の第一線で活躍されている方が多数出演されているだけあって、観ていてキャストさんの凄さを実感する場面が多々ありました。

虎杖役の佐藤さんは他作品でも何度か拝見していますが、ザ・主人公という強いオーラを纏っていながらも押しと引きの演技の塩梅が上手だなといつも思います。主人公だけど一般人、一般人だけど主人公、という虎杖の微妙な空気感を上手く表現されているなと。

真人役の太田さんはキャスティングを知った時からぴったりだなと思っていましたが、期待を裏切らない真人ぶりでした。表情や口調の表現の幅が広い方ですよね。

初めて拝見した方ですと、伊地知役の田中さんが素敵だったと思います。演技や間の取り方とかもそうですが、あの小さな声で早口でもはっきり聞き取れて状況が分かる、というのは凄いなと。

そして野薔薇役の豊原さん! ずっと気になっていた役者さんの一人ですが、想像以上に素敵でした😍表情や所作もメリハリがあって観ていて楽しいですし、台詞や歌声への感情の乗り方にインパクトがありますね。出始めの「沙織ちゃん。私、東京に来たよ」の一言を聴いた瞬間、これはもう好きになってしまうかもなと思いました☺いずれ生で拝見してみたいです。

 

 

長々と書いてしまいましたが、色々な感情はありつつも、一回観てみて良かったなぁと思っています。今冬上演された続編はまた少し雰囲気が違うようですが、気になったら観るかもしれません😌