かんなの観劇記録

ミュージカル・コンサートなどの鑑賞記録

ミュージカル「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」

公演記録

ミュージカル「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
2024年3月10日(日) 12:30開演 @東京建物Brillia HALL

市村正親 大竹しのぶ
マルシア 糸川耀士郎 熊谷彩春 上原理生 こがけん 加藤諒

石井雅登 小原和彦 榎本成志 下村将太 高田正人 高柳圭 俵和也 茶谷健太 山野靖博
岩矢紗季 川合ひとみ 北川理恵 鈴木満梨奈 高橋桂 永石千尋 福間むつみ
スウィング:安立悠佑

作詞・作曲:スティーヴン・ソンドハイム
脚本:ヒュー・ホイラー
演出・振付:宮本亞門
主催:フジテレビジョンホリプロニッポン放送
企画制作:ホリプロ

感想

映画化もされた本作を初観劇しました✂
2016年以来8年ぶりとなる今年はプリンシパルのうち4役(アンソニージョアンナ、ターピン、トバイアス)がダブルキャスト、そのうち5人が新キャストです。今回は新キャストである糸川さん、熊谷さん、上原さん、加藤さんの初日でした!

「ソンドハイム」の存在感

難曲が多いことで有名なソンドハイム作曲の舞台を観劇したのは今回が初めてですが、冒頭の1フレーズからその重厚感に引き込まれました。急上昇・急降下もざらではなく、難しいと言われるのも納得です。アンサンブルキャストに音大出身の方や二期会の方が多くいらしたのは、このためですかね。
劇場で聴いて特に驚いたのは、ジョアンナのキーの高さ。序盤のソロからデュエットから何から何まで、とにかく高い。あれを歌いこなせる役者さんはなかなかいないだろうなと思います。。。しかしそこはさすがの彩春ちゃん、いつもの美声を響かせていて聞き惚れました💘ふうかちゃんのジョアンナも観られるはずなので楽しみ!

想像以上にコメディ寄り

結末まで含めてストーリーを知っていたので、帰りは暗い気持ちになるかもな……と覚悟して劇場に向かったのですが、思った以上にコメディチックに作られていたので、気楽に観劇することができました。所謂ゴア的な描写もありますが、話のテンポが良いことやキャラクターや演出が誇張されていることもあり、あまり尾を引かなかったです。
私見ですが、彩春ちゃんは純真さ・透明感が持ち味であるが故に、暗い境遇のキャラクターを演じると悲壮感が際立つ印象を抱いていまして(たとえば「笑う男」のデアは痛々しさが強いように感じました)。本作はストーリーの重さ故にその「かわいそう感」が強く出すぎて、余計に痛ましくなってしまうのではないかと危惧していましたが、全編通してコメディ色が漂っていることもあり、わりとすっきりとした気持ちで観ることができました😌
昨年上演されたミュージカル「生きる」の感想でも書いた通り、宮本さん演出には長年苦手意識を強く抱いていたのですが、本作はコメディ調であっても特段引っ掛かりなく観劇できました。パイ屋の「2階」やジョアンナが閉じ込められている「部屋」など、視覚的に高い場所で繰り広げられていた惨劇がラストで舞台に着地する光景には、堕ちるところまで堕ちてしまったという絶望感をひしひしと覚えました。(しかしそうなると宮本さん演出の某舞台で覚えた異常なまでの嫌悪感は一体何だったんですかね……)

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登場人物全員に対する拭いきれない嫌悪感

悪役であるターピンやビードルは勿論のこと、主人公であるトッドやミセス・ラヴィット、「明るさ」の象徴であるアンソニージョアンナに至るまで、登場人物みんなから様々な種類の得体の知れなさ・気味悪さを感じました。悪人が報いを受けても、善人が助かっても後味が悪い。敢えてそう見えるように表現されているのかもしれないし、センセーショナルな設定に影響されているのかもしれません。

アンソニー、君に掛かっている

観劇してみて、この話がどう見えるのか/どのように捉えられるのかは、アンソニーの描かれ方次第なのではないかと感じました🤔今回拝見した糸川さんのアンソニーは「裏表がない」「狡猾さ・底意地の悪さもない」「底抜けに良いヤツ」「でもかなり頭が弱い」という印象だったので、本編後はジョアンナの尻に敷かれながら何だかんだ二人で幸せに暮らすのだろうな~と想像できます。正直に言えばジョアンナが彼に惚れる理由はあまり無いような気がしますが、ターピンに怯えながら生きてきた彼女にとって、アンソニーの素直さは何よりも魅力的に見えたのかもしれません。
もしアンソニーに思慮深い部分があったり、腹の底に何か抱えているように見えたりすると、物語の印象は全然違うのだろうなと思います。山崎さんがどう演じられているのか、拝見するのが楽しみです!

まとめ

これは仕方がないこととも思いますが、キャスティング故に序盤で「トッドの妻=乞食女」と分かってしまうのは、物語の面白さが半減してしまうように感じました。せめてもう少し暗くして「トッドの妻」を演じているのが誰か分からないようにするとか……でもそうなると幸せだった過去すらも昏く感じられてしまうので、塩梅が難しいですね。
全体としては終始見ごたえ、聴きごたえのある舞台でした!キャストさんも各々キャラクターが強くて楽しかったです。特に上原さんのターピン、想像以上にむちゃくちゃ気持ち悪かった笑
次回みられるのが楽しみ〜〜〜!!!