公演記録
シェルブールの雨傘
2023年11月11日（土） 13:00開演 ＠新橋演舞場
福間むつみ
ひのあらた 田村雄一 川口大地
茶谷健太 岡田治己 東間一貴
横関咲栄 田口恵那 吉田繭 江崎里紗
酒井比那 大倉杏菜 田中奏 井上弥子
大村真佑（スイング） 合田くるみ（スイング）
脚本：ジャック･ドゥミ
音楽：ミシェル･ルグラン
演出･上演台本･訳詞：荻田浩一
主催・製作：松竹株式会社 東京グローブ座
感想
往年の名作映画の舞台版、初観劇しました☔
衣装やセット、照明の色鮮やかさ、そして終始優雅な音楽が、特に一幕ラストにかけての哀愁を強調していたように感じました。
ハッピーエンドの作品だと認識していたので、ラストのギイの居たたまれなさにえ？ってなったんですが、原作と終わり方が違ったんですね。やっぱり笑顔で終わるシーンが良かったんじゃないかなぁ…マドレーヌが可哀想すぎるし…と思いつつ、作中通しての雰囲気には終幕で立ち竦むギイの姿がしっくりくるなぁとも感じました。上演時間も短くて、特に二幕の展開は早いので、彼一人過去に囚われたままの方が感情移入はしやすいですね。
全体的に、極力台詞が排除されている印象を受けました。原作の映画を彷彿とさせるような。そして歌うにはかなり難しそうな曲ばかりだったなと。外国製ミュージカルならではですが、日本語にした時にうまく音がはまらなくなることがありますよね。言葉数がギュッ！と圧縮されてる感じ。演じられる俳優さん達は大変だろうなぁと思いながら観てました🤔
朝月さんは今回初めて拝見しました。まだ精神的に未熟だったジュヌヴィエーヴが数々の葛藤を経てカサールと共に歩むことを決めるまでの心の揺れ動きを、丁寧に表現されていたなぁと思いました。彼女の行動は賛否両論で、「シェルブールの雨傘」で検索すると「ひどい」がサジェストに出てくるくらいですが、今回観劇した私個人の感想としては、まあ仕方ないよね……という気持ちです。大きなお腹を抱えたまま「ギイから手紙が来ない」と不安がる彼女の様子がとても痛ましいので、同情したくなります。
夫人役の春野さんも初めましてでしたが、とても表情豊かで拝見していて楽しかったです。ギイを否定するしジュヌヴィエーヴの行動を制限するし、自由にさせてあげてよ！と言いたくなりますが、時代背景を考えたら夫人の心配も無理はないというか。カサールとくっつけるために色々手を回す反面、「あなたの幸せのために…」と娘を諭す言葉に嘘は無いし、（たとえギイを認めていなくても）孫が産まれることは心から楽しみにしていたんだろうなというのが随所に見て取れました。
御二人の演技を拝見した上でストーリーを振り返ると、原作よりも「ギイを待っていた現実の醜さ」みたいなものが薄まっていたように感じます。ギイもギイで良くないところはあったし、状況的に仕方なかったね、と。
京本さんは、ギイの青臭さや脆さ・儚さみたいなものが、御本人の雰囲気と合っていて良かったなぁと思います。二幕、帰国してからの絶望に打ちひしがれるさまは胸に迫るものがありました。「NEWSIES」で拝見した時も思いましたが、オペラグラスを覗かなくとも、感情がオーラのように見て取れるのは凄いなぁと思います。歌に関しては、ここ1年くらいで更に声が高くなられた印象があるので、低音はところどころちょっとキツそうでしたね……。
開演前、舞台上の奥の隙間は何なのか気になっていたんですが、スプリンクラーから水が吹き出してきてびっくり😲本当に「雨が降る」演出は綺麗で、つい見入ってしまいますね。
荻田さん演出の作品は過去に幾つか拝見してますが、個人的に「イヴ・サンローラン」の時の舞台から回転して登場する噴水が凄く印象に残っていまして。雨傘屋をはじめくるくる回るセットを観ながら（あの噴水みたいだ！！！）とテンションが上がりました🤭笑
新橋演舞場は初だったんですが、古き良き劇場だなぁという印象でした。ロビーとか内装とか、風情がありますね。3階で観劇しましたが、座席はちょっと狭めでも、結構しっかり段差が付いているので、わりと観やすかったです。サイドにならないギリギリくらいの位置でしたが、映像が若干見切れたくらいで、舞台上は普通に見えました。
恋愛ものでありながら、ギイとジュヌヴィエーヴの幸せなシーンはたぶん劇中で十数分程度しか描かれていなくて、それぞれの葛藤がメインに据えられた作品なんだなと改めて感じました。過去の恋愛を「若かった」と一蹴することは簡単だけど、そうはせず、大切なものとしてきちんと向き合った上でそれぞれの未来を選んだという意味で、この作品はやはりハッピーエンドなんだろうなと思います。でもやっぱり笑顔のギイで終わってほしかったよ！という気持ちはどうしても捨てきれません😔笑
