公演記録
ミュージカル「生きる」
2023年9月23日（土） 17:30開演 ＠新国立劇場 中劇場
市村正親
村井良大 上原理生 高野菜々（音楽座ミュージカル） 実咲凜音 福井晶一 鶴見辰吾
佐藤誓 重田千穂子 田村良太
治田敦 内田紳一郎 鎌田誠樹 齋藤桐人 高木裕和 松原剛志 森山大輔
あべこ 彩橋みゆ 飯野めぐみ 五十嵐可絵 河合篤子 隼海惺 原広実 森加織
スウィング：齋藤信吾 大倉杏菜
安立悠佑 高橋勝典
原作：黒澤明 監督作品「生きる」（脚本：黒澤明 橋本忍 小國英雄）
作曲＆編曲：ジェイソン・ハウランド
脚本＆歌詞：高橋知伽江
演出：宮本亞門
感想
今期2回目、観劇しました！前回観劇時は鹿賀さんで拝見しましたが、今回は市村さんでした。鹿賀さんとは大分雰囲気が違っていて面白かったです。
勘治の年齢設定は60歳らしいですが、相応に歳を取っているのが市村さん、見た目は若いけれど老け込んでいるのが鹿賀さんと言う印象。なので二幕以降、鹿賀さんの勘治は「若さを取り戻した」のに対して、市村さんの勘治は「若返った」というように感じられました。とよといる時も、僅かながらですが笑顔が見えていて、本当に楽しかったんだろうなと。
光男との関係性も違って見えました。仲は良かったけれど光男が家庭を持ったのをきっかけに何となく縁遠くなっていて。劇中で口論をしているのも、昔のように言いたいことを言っていたら拗れてしまったのだと思いました。
一方で鹿賀さんの勘治は光男との上下関係が明確で。光男は心の底から父親としての勘治を尊敬していたからこそ、「立派な父親」の枠から外れた彼を受け入れられなかったのだろうと感じました。
なのでラストシーンも、前回と今回とで大分印象が違いました。前回は「光男が漸く勘治の『人間らしさ』に向き合えた」、今回は「光男と勘治が親子に戻れた」ように見えました。全てが遅すぎた中で、最後の最後に一筋だけ見えた希望の光に触れたような苦しさを覚えた前回に対して、今回はあたたかい気持ちに包まれたまま終幕を見届けることができました。
小説家は勘治のキャスト次第で台詞が違うとのことでしたが、確かに何となく接し方が違ったように思います。市村さんの勘治との方が友人に近い距離感というか。鹿賀さんの勘治とは、目上の人として敬意を払い、踏み込みすぎないようにしている印象だったので。そう思うと、光男と勘治との関係性に通づるところもありますね。まだパンフレットとか全然読めていないので、とんだ見当違いかもしれませんが😂笑
前回は初見ということもあってあまり余裕が無かったのですが、今回は色々と見られて楽しかったです。
ラスト、お葬式で一枝が身重なことに今回初めて気付きました。考えてみたらそりゃそうですよね……。実親が亡くなったばかりだというのに頭を下げなければならない光男、葬式の場で助役をヨイショする職員たちを前に、何を思っていたんでしょうね。本作の中で彼女やとよ、木村は新しい時代の象徴として描かれていると思うのですが、それでもあのような場では「上」に従うしかないというのが見ていて痛々しかったです。どれだけ自由でも、小説家のように何処にも属さない人間でも無い限り、慣習からは逃れられないんですよね。
今回は前回よりも舞台に近い席で観劇できたのですが、役所の職員たちが歌うシーンで木村は入っていないことが多々あるのが分かって、ある種の彼の異端さみたいなものが見えました。彼もあのまま抑圧され続けていたら（山田のような）職員になっていたかもしれないですが、勘治と一緒に尽力した経験があるからこそ、そうはならないだろうと思えるのが観客目線での救いなのだろうと思います。しかし田村さん、相変わらず若々しくていらっしゃる😂もう40歳らしいですが、全然そうは見えないですよね。
これは前回も思いましたが、ちょくちょく本役以外でも出ていらっしゃる福井さん、すごく目立ちますね笑 下水課長として出ていらした時も、良い声すぎてびっくりしました。福井さんのあの、喋っているだけでも滲み出る貫禄にはいつも圧倒されます。
市村さん・上原さんの東京楽でしたが、最後のカーテンコールで勘治と光男が二人でブランコを漕いでいる姿には感涙しました😭😭😭今回は2回目ということもあって何とか泣かずに観られていたのですが、最後の最後でやられました。あれはずるいですね……。
今期初めて観劇しましたが、本当に素晴らしい作品でした！今年の私的ベストミュージカルのトップ5には入りそうです👑作品そのものも素敵ですが、市村さんと鹿賀さんの演技に心を震わされました。お二人の演技力あってこそですね。いつか再演があったら、また拝見したいです❄
